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2009-10-26

「終末のフール」 の読後

集英社文庫 / 伊坂 幸太郎

小惑星の衝突による八年後の地球滅亡が予告されて五年。この世の終わりまで三年をむかえた人々の日常を書いたオムニバス。

自分だったらどうするかを考えずにはいられない物語です。周囲の状況にとらわれず自らの生き方を律して黙々とトレーニングにはげむキックボクサーの話が私は一番好きですが、そういう生き方にあこがれはするものの、自分には絶対に無理です。早々に絶望して命を絶つか、世間の争いごとにまきこまれてこの世から退場するかどちらかでしょう。

この物語のシチュエーションの怖さは、人生の残り時間に制限がかけられたことだけではありません。地上のありとあらゆる人たちが運命をともにするということ、そこには連帯感などといった肯定的な価値が生まれるわけでもなく、ただ個の喪失があるだけです。各々で違った価値観をもち、異なる人生を送ることが許されてきたのに、三年後に滅びるという共通の約束事によって、心の大きな部分で他人との画一化が強いられる。そういった状況にたまらない肌寒さを感じます。

広大な宇宙でのこと、ちっぽけな地球とこれまたちっぽけな小惑星との八年後の衝突が正確に予測されたという設定には少々無理がありますし、それだけの時間があれば何らかの対策を人々が必死になって講じている気がします。でも、その程度のケチは、この物語のおもしろさに影をおとしません。気になるのであれば、八年後に来る世界の終末を他の何らかの形で仮定して読んでもよいのです。

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